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秋刀魚2013年09月18日

秋刀魚を食べると、必ず佐藤春夫の詩を思い足ます♪
谷崎純一郎に妻を寝取られた時に書いたともいわれています♪


「秋刀魚の歌」 佐藤春夫

あはれ
秋風よ
情(こころ)あらば伝へてよ
ー男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食(くら)ひて
思ひにふける と。

さんま、さんま。
そが上に青き蜜柑の酢をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児は
小さき箸をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸(はら)をくれむと言ふにあらずや。

あはれ
秋風よ
汝(なれ)こそは見つらめ
世のつねならぬかの団欒(まどゐ)を。
いかに
秋風よ
いとせめて
証せよ かの一ときの団欒(まどゐ)ゆめに非ずと。

あはれ
秋風よ
情あらば伝へてよ、
夫を失はざりし妻と
父を失はざりし幼児とに伝へてよ
ー男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。

さんま、さんま、
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。
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